インタビュー・文／天久聖一

ポルターガイストの正体とは!?

石野「（壁の通気孔から大量の粘液と共にドロ〜リと現れて）ちょっと待った〜〜っ!!」

瀧「（数人の警備員に囲まれながら仙人姿で現れて）オデもちょっと待った〜〜っ!!」

― な、なんですか！　アンタ達!!

石野＆瀧「（せーの！）WE ARE 電気グルーヴ!!　（抱きあって）日本はまだまだ豊かになりますぞ〜〜ッ!!」

― （あまりに非常識な登場に憤慨しつつも）……とにかくお元気そうでなによりですね。 今回はかなり趣向を凝らした登場（と、いうか出現）をされたわけですが、これはおふたりの新曲に対する意気込み、と捉えていいのでしょうか？

石野「（体中の粘液をワラで払いつつ）まあね。それだけ今回の新曲は自信作ってことかな？」

瀧「（仙人姿から某私立幼稚園の制服に着替えながら）モチロンだヌ〜ン！　アレ？　歯がグラグラする！」

― （歯は無視して）それは早く聴きたいですね。新曲のタイトルは“Nothing's Gonna Change”と言うことですが、まずはその意味についてお聞かせ下さい。

石野「直訳通り“何も変わらない”ってことかな？　特に日本がいまだ敗戦国であるという事実がね……」

瀧「それにお風呂の順番やおこづかいの額（いまだ20銭）も変わらないよね！　 他にも高いオモチャは誕生日とクリスマス以外は買ってもらえないことや、 伝記を読んだら必ずお父さんにその感想を言わなきゃならないこととかも……アレ？　選挙の声しない？」

― （無視して）レコーディング中の苦労話とかはありますか？

石野「今回は害虫とポルターガイストに悩まされたね」

瀧「主にイナゴと白アリかな？　イナゴは穀物に大きな被害を与えたし、白アリはスタジオ（古寺を改築した木造スタジオ）の柱を食い荒らすしね。 あと便所の蛾が恐かった！　羽の模様がこっちを見てるみたいで……」

― ポルターガイストの方は？

石野「深夜に突然、パーン！って音がするんだよ、空気が裂けたような。それって霊が現れる前に超こる怪奇現象なんだってさ！」

瀧「コレのこと？（と、手のひらにのせた味ノリの袋を勢いよく叩いて）」

パ――――――ン!!

石野「それ！」

― ハァ…（タメ息）新曲では新しい機材も導入されたそうですが、いかがでした？

石野「ああ、乾くとキラキラ光るボンドのペンのことね！」

瀧「いや、尻尾を持って揺らすとクネクネ動くヘビのオモチャだよね？」

石野「便所に入れる黄色いクスリのボールじゃなかったっけ？」

瀧「百円入れて自分の星座に合わせてガチャンと回すヤツだよ。昔、喫茶店によく置いてあったよね？」

― でも名前が出てこない、というわけですね。新曲の中でどのように使われているか楽しみです。 ところで、おふたりはレコーディング中、お互いをいつもと違った呼び方で呼んでいるとか？

石野「（なぜか異常に照れながら）ええ、まあそうですね。“おい”とか“ちょっと”とか、あと“陛下”とか……」

― 陛下!?

瀧「“ねえ陛下”とか“陛下これどう？”とか、たまに気分がいいと“チューバッカ”とか？（照れ＆プーン）」

― （対応に困惑しつつ）お互いを尊敬してらっしゃるということですね。 さて、先行シングルの次はいよいよニューアルバムですが、発売日も来年2月2日に決定してこちらも大変楽しみですね！

石野「ええ。しかし、もっと楽しみなこともあります！（キッパリ）」

― と、言いますと？

石野「来週、近所にリサイクルショップがオープンするんですよ。 しかも今、そこの店主とおぼしき人物に積極的に話しかけてかなりの情報をゲットしてるんです。 割と新しいパイプベッドや、ちょっとスリムな本棚とか結構スグレモノがあるらしいんです！（激しいまばたき）」

― ……それはとても楽しみですね。瀧さんは？

瀧「オデ？　明日ポニーの写真撮りに行く！　こんな馬を小さくしたヤツ？　もしかしたら半分くらいの確率だけど乗せてくれるかも！」

― 乗れるといいですね。（同情の眼差し）

地蔵峠でハートブレイク!?

― では、話題を変えましておふたりのプライベートについてお話を伺いたいのですが？

石野「やはり年頃なんですかね〜、最近娘の行動がどうも理解できんのですよ」

― いつも話題にのぼる中2の娘さんですね。

石野「ええ。先日も近所の神社で開かれた縁日に友達同士で行ったりとかですね、しかも私に無断でですよ！」

― それは心配ですね。

石野「男親としてはね。で、どうやらその友達の中には男も混じってるみたいなんですわ」

― ただのボーイフレンドでは？

石野「だといいんですがね。私も週末は俳句の会やなんかで忙しいでしょ？　 近頃は自動販売機なんて言う不良の溜まり場もありますからね、アレは夜でも明るいでしょ？　 私、集会でも反対したんですよ！　村にあんなモン置いちゃダミだって！　 （外を走る原付バイクの音に反応して）あっ、母ちゃん帰って来た！」

― ……瀧さんの方は？

瀧「（白い汁の出る木の実をクチャクチャ噛みながら）オデ？　恋のライバル登場だヌーン！」

― 詳しくお聞かせ下さい。

瀧「隣村の未亡人に毎日イモ届けてる話はこの前したダドン？　ちなみにその時この目で天狗を見たって話もしたダドン？」

― はい（笑）。

瀧「（噛んでいた木の実を土間の草履にペッと吐き出し）ところがその未亡人に役場のアキラがちょっかい出してきたんだビッチ！」

― アキラさんですか？

瀧「（拳をパシッ）戸籍課のアキラだヌーン。あいつ親父が住職で金持ちだからって役場にジーパンで通ったりしてやりたい放題だヌ〜ン！」

― 役場にジーパンで！

瀧「おまけにロンゲ（前髪が眉毛にかかっている程度）ダドン？　だからオデ、あいつに果たし状叩きつけてやったヌ〜ン！　 “勝負スッから地蔵峠まで来い！”って」

― 地蔵峠まで！

瀧「すると、あの野郎なんとその場所に未亡人同伴して来やがったビッチ!!」

― それはヒドい！

瀧「ウーもモッコチンシ〜ら？（君もそう思うだろ〜？）　 デウで（それで）オデもムッスい（スゴく）チャールッテンで（腹が立って）、 ヌシどんの（憎いあいつの）ダンペ（腰）イリって（つかんで）マクリブッチ（投げ飛ばそうと）したダドン！」

― ほーう、デウで？（それで？）

瀧「シクモピンギャァ（そしたら）、オデ、ベ・マクリブッチで（逆に投げ返されて）ムッスイ（スゴく）カンベチ〜ベタ！（恥かいた！）」

― マサヴいねぇ…（残念だったねぇ…）

瀧「その一件以来、未亡人とは会ってないダドン。正直言うともうこの恋はンゴッと（ほとんど）終わったようなもんダドン……」

― そうだったんですか。（しんみり）でも女性は何も彼女だけじゃないですよ。

瀧「その通りダドン！　実はもう既にオデ、新しいマドンナを見つけたビッチ！」

― なあんだ！　で、その彼女とは？

瀧「先週、村の神社で縁日があった日、公民館で活動（映画のことらしい）の上映会があったダドン？　 そのスクリーン（白めの土塀）で見た絶世の美女が忘れられないヌ〜ン！」

― 女優さんなんですか？

瀧「確かヨシナガサユリとか言う名前だったヌ〜ン！　なあ記者さん！　 東京にはあんなべっぴんさんがビランギ（たくさん）暮らしてるんダドン?!」

― そ、そうですね。ビランギ（たくさん）いるでしょうね！

瀧「パ――ン!!（手のひらにのせた味ノリの袋を鳴らして）　こうしちゃいられないダドン！　さっそく今夜の夜行で東京さ出発だヌ〜ン！」

― いってらっしや〜〜い!!

石野「オレも目が覚めた！（味ノリの袋の音で）　娘がなんだ！　俳句がなんだ！　戦車が恐くて赤いきつねが食えるか!!　 瀧！　オラも連れて行ってくれ〜〜〜っ!!」

こうして後のお騒がせ中年ユニット、電気グルーヴは小さいながらも確実に明日への一歩を踏み出した。 夜汽車の車窓からは生まれ育った故郷が見えた、遠ざかる民家の明かりがふたりの決意を固くした。 静かに目を閉じる、BGMは“Noghing's Gonna Change”、何も変わらない……

（数年後…）

深夜、都内某所の雑居ビルで事前に渡された新曲デモテープ（とは名ばかりのハリガネを巻きつけた運動靴）を手に無言・無表情で待つこと3時間、 約束の時間から大幅に遅れ、ようやくふたりが姿を現した…。

石野＆瀧「WE ARE 電気グルーヴ!!!」